【ダイソー・セリア】100均底鋲が教えてくれた「直す」という選択肢 – 愛用バッグとの30年物語

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100均底鋲が教えてくれた「直す」という選択肢 - 愛用バッグとの30年物語
目次

プロローグ – 母からの贈り物

高校入学の記念品

1993年春、私が高校に入学する際、母が奮発して買ってくれたのが紺色のナイロン製スクールバッグだった。当時としては決して安くない8000円のバッグで、「高校3年間、大切に使いなさい」という母の言葉と共に手渡された。

厚手のナイロン生地に、しっかりとした持ち手、内側には複数のポケットが配置された機能的なデザイン。高校生の私にとって、このバッグは「大人への第一歩」を象徴する大切な持ち物だった。

愛用の始まり

高校時代の3年間、このバッグは私の分身のような存在だった。教科書、ノート、お弁当、部活の道具——毎日重い荷物を詰め込んでも、バッグは頼もしく支えてくれた。

友人たちが次々と新しいバッグに買い替えていく中、私は一貫してこのバッグを使い続けた。理由は単純で、とても使いやすく、愛着が湧いていたからだった。

大学時代への継続

高校卒業後、多くの人は新生活に合わせて持ち物を一新するが、私はこのバッグを大学でも使い続けることにした。A4サイズの資料がすっぽり入り、パソコンも安全に持ち運べる構造は、大学生活にも最適だった。

周囲からは「まだそのバッグ使ってるの?」と言われることもあったが、機能的で丈夫なこのバッグに不満は全くなかった。むしろ、使い込むほどに手に馴染み、愛着は深まっていった。

第一章 – 社会人になってからの変化

就職活動での活躍

大学4年生の就職活動でも、このバッグは重要な役割を果たした。履歴書、エントリーシート、企業資料などを整理して持ち歩くのに、複数のポケットが非常に便利だった。

面接官から「しっかりした学生さんですね」と言われることが多く、後から考えると、きちんと整理されたバッグの印象も評価に影響していたのかもしれない。

新社会人としての相棒

2000年4月、念願の会社に就職した私は、このバッグと共に社会人生活をスタートした。ノートパソコン、資料、弁当、着替えなど、会社員として必要なアイテムを毎日運んでくれる頼れる相棒だった。

同期の中には高級ブランドのビジネスバッグを持つ人もいたが、私のバッグは実用性で勝負していた。「君のバッグ、すごく機能的だね」と先輩から褒められることもあった。

初めての異変

社会人になって3年目の2003年頃、バッグの底面に小さな異変を発見した。地面に置いた時の擦れによる生地の薄化と、わずかな破れが生じ始めていた。

10年間使い続けてきた愛用品に初めて現れた「老化」の兆候だった。しかし、まだ使用に支障はなく、「もう少し様子を見よう」と思っていた。

問題の深刻化

2004年の梅雨時期、雨の日にバッグを地面に置いた際、底面の破れた部分から水が侵入してしまった。大切な資料やノートパソコンが濡れる危険性を初めて実感し、「何か対策を講じる必要がある」と考えるようになった。

第二章 – 修理という選択肢の模索

買い替えか修理か

バッグの底面に問題が生じた時、最初に考えたのは「そろそろ買い替え時かな」ということだった。11年間使用しているバッグだし、社会人として、より「大人らしい」バッグに替える時期かもしれないと思った。

しかし、デパートやバッグ専門店を回ってみても、これほど機能的で使いやすいバッグは見つからなかった。そもそも、このバッグ以外を使うことが想像できなくなっていた。

修理店への相談

「それなら修理してでも使い続けよう」と決心し、近所の鞄修理店を訪ねた。職人さんにバッグを見せると、「底面全体を補強すれば、まだまだ使えますよ」との診断だった。

しかし、見積もりは12000円。新品を買った時より高い金額に驚いた。「それだけかかるなら、新しいバッグを買った方が良いのでは?」という迷いが生じた。

家族との相談

実家に帰省した際、母にバッグの状況を相談した。母は「あなたがそんなに愛用しているバッグなら、修理してでも使い続けた方がいいんじゃない?でも、修理代が高すぎるのも考えものね」と言ってくれた。

そんな時、母から意外な提案があった。「底の部分を自分で補強してみたらどう?昔は破れた物は捨てずに、工夫して直して使っていたものよ」

DIY修理への興味

母の提案を受けて、「自分で修理する」という選択肢を検討し始めた。インターネットで「バッグ 底 修理 DIY」などのキーワードで検索すると、様々な自作修理方法が見つかった。

中でも興味を引いたのが「底鋲(そこびょう)」を使用した補強方法だった。バッグの底面に金属製の鋲を打つことで、直接地面に接触することを防ぎ、摩耗を軽減するという仕組みだった。

第三章 – 100均底鋲との出会い

手芸店での価格調査

底鋲という解決策を知った私は、さっそく手芸用品店を訪れた。確かに底鋲は売っているが、4個セットで800円程度と、意外と高価だった。さらに、取り付けに必要な専用工具も別途購入する必要があり、総額で2000円以上かかりそうだった。

「修理店に頼むよりは安いけれど、もう少し安価な方法はないだろうか」と思いながら、とりあえず一度検討することにした。

100円ショップでの発見

偶然立ち寄った近所のダイソーの手芸コーナーで、「底鋲」の文字を発見した時の驚きは今でも忘れられない。4個入りで110円(当時は105円)という価格に、「本当にこれで大丈夫?」という疑問と同時に、「試してみる価値はある」という期待が湧いた。

パッケージを見ると、取り付け方法も簡単に説明されており、特別な工具は不要とのことだった。金槌があれば自宅で取り付け可能ということで、「まずは試してみよう」と購入を決めた。

初めての取り付け作業

自宅に帰って、愛用のバッグと100均の底鋲を前に、いよいよ「手術」の開始だった。取り付け位置を慎重に決め、バッグの底面にマーキングを行った。

11年間愛用してきたバッグに穴を開けることへの不安と、「これで長く使い続けられるかもしれない」という期待が入り混じった複雑な心境だった。

予想外の簡単さ

実際に作業を始めてみると、100均の底鋲は想像以上に簡単に取り付けることができた。専用工具は不要で、金槌で軽く叩くだけで、しっかりと固定された。

4個の底鋲を取り付けるのに要した時間は約15分。「こんなに簡単で良いのだろうか」と拍子抜けするほどスムーズな作業だった。

即座に感じた効果

底鋲を取り付けた直後から、その効果を実感することができた。バッグを地面に置いた時、底面が直接地面に接触しなくなり、汚れや摩耗を大幅に軽減できることがわかった。

また、底鋲のおかげでバッグが滑りにくくなり、電車内などで足元に置いた時の安定性も向上していた。

第四章 – 劇的な効果と日常生活の変化

耐久性の向上

底鋲を取り付けてから数ヶ月経過すると、その効果は明らかだった。それまで進行していた底面の摩耗が完全に止まり、バッグ全体の耐久性が格段に向上していた。

雨の日でも、底鋲のおかげでバッグ本体が濡れることがなくなり、中身を守ることができるようになった。たった105円の投資で、11年来の愛用品を救うことができたのだ。

周囲からの反応

職場でバッグに底鋲が付いているのを見た同僚たちの反応は様々だった。「それ、何?」「便利そうですね」「どこで買ったんですか?」といった質問を多く受けた。

100均の底鋲だと説明すると、「105円でそんなに効果があるんですか?」と驚かれることが多く、中には真似を中には真似をして自分のバッグにも底鋲を取り付ける同僚も現れた。

機能美への気づき

最初は「応急処置」のつもりで取り付けた底鋲だったが、次第にその存在が「機能美」として感じられるようになった。金属の輝きが、長年使い込んだナイロン生地との対比で、むしろバッグに品格を与えているように見えた。

「修理跡を隠す」のではなく、「機能向上のパーツとして堂々と見せる」という発想の転換が生まれた。工業製品のような実用的な美しさを発見した瞬間だった。

メンテナンスの楽しさ

底鋲を定期的にクリーニングクロスで磨くことが、新たな習慣となった。月に一度、バッグ全体の手入れと合わせて底鋲を磨く時間は、愛用品との対話のような貴重な時間になった。

金属の輝きが戻ると、バッグ全体が生き返ったような感覚を覚えた。「物を大切にする」ということの具体的な実践として、この習慣は大きな意味を持っていた。

予期せぬ副次効果

底鋲の効果は底面保護だけにとどまらなかった。バッグの重心が安定し、持った時のバランスが向上していた。また、床に置いた時の音が「ドサッ」から「カチッ」という軽やかな音に変わり、周囲への配慮という面でも改善が見られた。

こうした予期しない改善効果が、100均アイテムの奥深さを感じさせてくれた。

第五章 – 結婚と新生活での継続使用

パートナーとの出会い

2006年、私は現在の妻となる女性と出会った。初回のデートから、例のバッグを持参していた。彼女は「そのバッグ、とても使い込まれていて、愛用品なのがわかりますね」と言ってくれた。

底鋲について説明すると、「自分で修理して長く使うなんて、素敵な考え方ですね」と理解を示してくれた。この反応で、彼女が「物を大切にする」価値観を共有できる人だとわかった。

結婚準備での選択

結婚が決まった2008年、新生活の準備をする中で、再び「バッグを新調するか」という選択肢が浮上した。妻からも「新しい生活だから、新しいバッグにしてみる?」という提案があった。

しかし、15年間使い続け、底鋲による改修も成功しているこのバッグを手放すことは考えられなかった。「もう少し使い続けたい」と伝えると、妻も快く理解してくれた。

共働き生活での活躍

結婚後の共働き生活で、このバッグはさらに重要な役割を担うようになった。夫婦それぞれの仕事道具、共有の書類、買い物したものなど、多様な荷物を運ぶ「家庭の物流担当」として活躍した。

妻も「このバッグの収納力は本当にすごいね」と感心し、時々借りて使うようになった。夫婦で共有する愛用品という新たな価値が生まれた。

妻の100均DIYへの関心

底鋲の効果を間近で見ていた妻は、100均アイテムを使ったDIYに興味を持つようになった。「私の古いバッグも、何か改良できないかしら」と相談されるようになった。

一緒に100円ショップを回り、様々な補修・改良アイテムを探すことが、夫婦の新しい共通の趣味となった。

第六章 – 子育て世代での進化

第一子の誕生

2010年、長男が誕生した。子育てが始まると、バッグの中身は一変した。おむつ、哺乳瓶、着替え、おもちゃなど、赤ちゃん用品が大半を占めるようになった。

17年間使い続けたバッグは、今度は「パパバッグ」として新たな任務に就いた。大容量で整理しやすい構造は、子育て用品の持ち運びにも最適だった。

公園での耐久性テスト

子どもと公園に行く機会が増えると、バッグを地面に置く回数も格段に増加した。砂場、芝生、コンクリート、様々な地面にバッグを置くたびに、底鋲の効果を実感した。

他の父親たちのバッグと比べて、明らかに汚れや傷が少ないことがわかった。「そのバッグの底についてる金具、何ですか?」と質問されることも多くなった。

パパ友への伝播

保育園のお迎えで知り合ったパパ友たちに、底鋲の効果を説明すると、「今度やってみます」という反応が多かった。数ヶ月後、何人かのパパが実際に底鋲を取り付けたバッグを持参してきた。

「教えてもらった底鋲、本当に効果ありますね!」「うちの妻も興味を持って、自分のバッグにも付けました」といった報告を受けると、小さな知識が人の役に立っていることを実感できた。

息子の観察と学び

3歳になった息子は、父親のバッグの底についている「金色のポチポチ」に興味を示すようになった。「これ何?」「どうして付いてるの?」という質問に答えながら、「物を大切に使う」「工夫で問題を解決する」ことの意味を伝えるようになった。

息子にとって、父親のバッグは「直して長く使うもの」の代表例として認識されていった。

第七章 – 第二世代底鋲への交換

初代底鋲の限界

2015年、底鋲を取り付けてから約10年が経過した頃、金属部分にくすみや小さな変形が見られるようになった。機能的には問題ないが、見た目の美しさが少し損なわれていた。

「そろそろ交換時期かな」と考え始めた時、息子から「お父さん、バッグの金色が暗くなってるよ」と指摘された。子どもの純粋な観察眼に、改めて底鋲の状態を客観視することができた。

100円ショップでの再購入

久しぶりに100円ショップの手芸コーナーを訪れると、底鋲の種類が増えていることに驚いた。従来の真鍮色に加え、シルバー、ブラック、さらには装飾的なデザインの物まで選択肢が豊富になっていた。

「今度はシルバーにしてみようかな」と考えながら、新たな底鋲を購入した。10年ぶりの交換作業に、少しワクワクした気持ちを覚えた。

交換作業の感動

古い底鋲を外し、新しい底鋲を取り付ける作業は、10年前の記憶を蘇らせる懐かしい体験だった。息子も興味深く作業を見学し、「お父さん、すごい!新しくなった!」と喜んでくれた。

新しいシルバーの底鋲は、年月を経たナイロン生地との対比で、また違った美しさを演出してくれた。同じバッグなのに、まるで新品のような印象を与えてくれた。

メンテナンス習慣の継承

息子に「このバッグ、何年使ってると思う?」と質問すると、「えーっと、僕が生まれる前から?すごく長い!」という答えが返ってきた。「君が大人になっても、まだ使ってるかもね」と言うと、目を輝かせて「本当?」と聞き返してきた。

月に一度のバッグメンテナンス時間に、息子も参加するようになった。底鋲を磨く作業を手伝いながら、「物を大切にする」ことの意味を体験的に学んでいる様子だった。

第八章 – 30年目の到達と振り返り

記念すべき30年

2023年春、このバッグは「30歳」を迎えた。高校入学時から数えて30年間、私の人生の様々な場面で共に歩んできた相棒だった。学生時代、就職活動、新社会人、結婚、子育て——人生の重要な局面で、常にそばにいてくれた存在だった。

30年間で交換したパーツは底鋲のみ。110円のアイテムが、数千円のバッグを30年間使い続けることを可能にしてくれた計算になる。このコストパフォーマンスの高さは驚異的だった。

息子への技術継承

小学5年生になった息子は、底鋲の交換作業を一人でできるようになっていた。「お父さんのバッグが調子悪くなったら、僕が直してあげる」と言ってくれる頼もしい助手に成長していた。

息子の学校の図工の時間で「家にある工夫されたもの」を紹介する授業があり、父親のバッグの底鋲について発表したそうだ。「お父さんは捨てないで直す人です」という息子の言葉に、価値観の継承を感じた。

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