夫の降圧剤を見つけた時、私は深いため息をついた。テーブルの上、引き出しの中、洗面台の隅など、家中のあちこちに薬が散らばっている状況が、もう半年以上続いていた。
我が家の薬事情は複雑だった。夫は高血圧で毎日服用する薬が3種類、私は時々処方される胃薬と頭痛薬、8歳の息子は気管支喘息で吸入薬と服薬が数種類、5歳の娘は軽いアレルギーで時々飲む薬がある。さらに、風邪をひいた時の解熱剤や抗生物質など、一時的に処方される薬も加わる。
病院から帰ってくるたびに薬袋が増え、どこに何があるのか分からなくなっていた。夫は「どこに血圧の薬を置いたっけ?」と毎朝探し回り、私は子どもたちの薬を探すのに貴重な時間を費やしていた。
危機感を覚えた出来事 ある夜、息子が咳き込んで起きた時、いつもの吸入薬が見つからずパニックになった。30分近く家中を探し回った末、夫の書類の下に埋もれているのを発見した。その時、「このままではいけない」と強く感じた。薬の管理がずさんだと、家族の健康に直結する問題になりかねない。
市販の薬収納ケースも検討したが、家族4人分、しかも種類も服用タイミングもバラバラな薬を整理できる製品は、どれも高価で複雑だった。3,000円を超える製品ばかりで、「本当に我が家に合うのかな?」という不安もあった。
100均での解決策探し
「まずは安価で試してみよう」という気持ちで、ダイソーとセリアを回ってみることにした。最初は具体的なアイデアがあったわけではなく、「何か良いものがないかな」という漠然とした期待だった。
ダイソーでの発見 ダイソーの収納用品コーナーで、まず目に留まったのは透明なプラスチックケースだった。
- 小分けケース(仕切り付き): 一週間分の薬を朝・昼・夜で分けられる仕切り付きケース
- 引き出し式小物ケース: 複数の小さな引き出しがある、アクセサリー収納用のケース
- 密閉容器: 湿気を防げる蓋付きの小さな容器
- ラベルシール: 薬の名前や服用方法を記入できるシール
セリアでの追加発見 セリアでは、より細かい収納グッズが充実していた。
- ピルケース: 曜日別に分かれた一週間用ピルケース
- 小分けパック: チャック付きの小さな透明袋
- マスキングテープ: 可愛いデザインで、ラベル代わりに使えそう
- メモ帳: 服用記録や薬の情報を記入できる小さなノート
この時点で、「組み合わせ次第で理想的な収納システムが作れそう」という手応えを感じていた。
第一次収納システムの構築
最初に購入したのは、ダイソーの仕切り付きケース3個とラベルシールだった。家族一人ずつにケースを割り当て、それぞれの薬を整理することから始めた。
夫専用ケース 毎日服用する降圧剤3種類を、朝・夜の服用別に分けて収納した。透明ケースなので中身が見えて、飲み忘れもすぐに分かる。ラベルには「朝食後」「夕食後」と大きく書いて、迷わないようにした。
子どもたち専用ケース 息子の喘息薬と娘のアレルギー薬は、それぞれ色分けして収納した。子どもでも自分の薬が分かるように、好きなキャラクターのシールも貼った。
緊急薬・常備薬ケース 解熱剤、頭痛薬、胃薬など、必要な時に使う薬をまとめて収納した。こちらは使用頻度が低いので、一番上の棚に置いて、大人だけがアクセスできるようにした。
初回システムの成果と課題 1ヶ月使ってみた結果、薬を探す時間は大幅に短縮された。夫の飲み忘れも減り、「どこだっけ?」と探し回ることもなくなった。
しかし、新たな課題も見えてきた。
- 薬の量が多い時、ケースに入りきらない
- 一時的な薬(風邪薬など)の置き場所が曖昧
- 薬の説明書(薬情)の管理ができていない
- 飲み切った薬の空き袋が溜まってしまう
システムの改良と進化
課題を解決するため、再び100均に向かった。今度は具体的な問題意識を持っていたので、より効率的に必要なアイテムを見つけられた。
セリアでの追加購入
- A4ファイルケース: 薬情(薬の説明書)を整理するため
- 小さなゴミ箱: 空になった薬袋を一時的に入れるため
- マグネット付きケース: 冷蔵庫に貼り付けて、毎日見る場所に薬を置くため
- 付箋: 薬の変更や注意事項をメモするため
ダイソーでの追加購入
- 大きめの透明ケース: 一時的な薬や予備の薬を入れるため
- 小分け袋: 旅行時などの持ち運び用
- カレンダー: 服用記録をつけるため
第二次収納システムの完成 改良版システムでは、薬の種類と使用頻度に応じて、より細かく分類した。
- 毎日の薬: マグネット付きケースに入れて冷蔵庫に貼り付け、必ず目にする場所に配置
- 時々使う薬: 透明ケースに分類して、キッチンの引き出しに収納
- 緊急時の薬: 大きなケースにまとめて、リビングの救急箱と一緒に保管
- 薬情: ファイルケースに家族別に整理して保管
- 服用記録: カレンダーに飲んだ薬をチェック
家族それぞれのニーズに合わせたカスタマイズ
システムを使い続ける中で、家族それぞれの特性に合わせた細かな調整が必要だと分かった。
夫への配慮 夫は朝の準備が慌ただしく、薬を飲むのを忘れがちだった。そこで、コーヒーメーカーの隣にマグネット式ケースを設置した。コーヒーを淹れる際に必ず目に入るので、飲み忘れが激減した。
また、出張時の薬の持参用に、セリアの小分け袋に日数分をあらかじめセットして準備するようになった。「今度の出張、3日分用意しておいたよ」と声をかけるだけで、夫も安心して出かけられるようになった。
子どもたちへの工夫 息子の喘息薬は、学校に持参することもあるため、学校用と家庭用に分けて管理した。それぞれ色違いのケースにして、「青いケースは学校用、赤いケースは家用」と覚えやすくした。
娘のアレルギー薬は、症状が出た時だけの服用のため、「お腹が痛い時の薬」「鼻がムズムズする時の薬」など、子どもにも分かりやすい表現でラベルを作った。
私自身の管理方法 家族の薬管理の中心となった私は、全体を把握するためのマスターリストを作った。100均のメモ帳に、誰がいつ何の薬を処方されたか、いつまで飲むかなどを記録するようになった。
病院に行く前には、現在服用中の薬のリストを確認し、お薬手帳と一緒に持参することで、医師との相談もスムーズになった。
季節や体調変化への対応
システムを運用して1年が経つ頃、季節の変化や体調の変動にも柔軟に対応できるようになっていた。
花粉症シーズンの対応 春になると家族全員が軽い花粉症症状を起こすため、この時期専用のケースを用意した。点鼻薬、点眼薬、抗アレルギー薬をまとめて、玄関近くに設置。外から帰ってきてすぐに使えるようにした。
風邪・インフルエンザシーズンの準備 冬が近づくと、解熱剤や咳止めなどの常備薬を点検し、期限切れのものは処分して新しいものを準備した。100均の密閉容器に乾燥剤と一緒に保管することで、湿気による劣化も

