【ダイソー・セリア】100均の腕時計が教えてくれた時間の価値:失くしものが多い私の20年間の体験記

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100均の腕時計が教えてくれた時間の価値:失くしものが多い私の20年間の体験記

小学3年生の頃、クラスの友達の多くが腕時計をするようになりました。特に印象的だったのは、隣の席に座っていた田中くんのデジタル腕時計でした。黒いプラスチックのベルトに青い液晶画面、ボタンを押すとバックライトが光る機能まで付いていて、私には宝物のように見えました。

「お母さん、僕も腕時計が欲しい」とお願いしましたが、母の答えは予想通り「まだ早い」「無くしてしまうでしょう」というものでした。確かに私は子供の頃から忘れ物や失くし物が多く、学校の体操服を忘れたり、鉛筆を無くしたりすることがよくありました。母の心配は的を射ていました。

それでも腕時計への憧れは強く、友達の腕時計を見るたびに「いつか自分も」という思いを募らせていました。時計があれば大人の仲間入りができる気がしていたのです。

憧れの対象: 腕時計は単なる時刻確認ツールではなく、「大人への憧れ」の象徴でした。

親の現実的判断: 母の「無くしてしまう」という心配は、過去の経験に基づいた合理的な判断でした。

物欲の芽生え: 初めて「欲しいもの」に対して強い執着を感じた経験でした。

社会性への意識: 友達と同じものを持ちたいという集団への帰属意識が芽生えていました。

目次

中学入学と念願の腕時計購入

中学校に入学する際、母がついに腕時計の購入を許可してくれました。「中学生になったら必要だから」という理由でした。近所のスーパーの時計売り場で、私は人生初の腕時計を選びました。

選んだのは3,000円のデジタル腕時計でした。当時の私にとっては高価な買い物で、「絶対に大切にする」「無くさないようにする」と母に約束しました。腕に付けた瞬間の嬉しさと誇らしさは、今でも鮮明に覚えています。

しかし、その幸せは長くは続きませんでした。購入から2ヶ月後、体育の授業で外した腕時計を更衣室で紛失してしまったのです。探しても探しても見つからず、結局そのまま行方不明になってしまいました。母に報告した時の申し訳なさと情けなさは、今思い出しても胸が痛みます。

念願成就の喜び: 長い間憧れていたものを手に入れた時の喜びは格別でした。

責任感の芽生え: 高価なものを持つことへの責任を初めて感じました。

失敗の痛み: 約束を破ってしまった罪悪感と、母への申し訳なさ。

自己嫌悪: 「やっぱり自分はダメなんだ」という自己否定的な感情。

高校時代:腕時計なしの不便さ

中学時代の失敗から、母は二度目の腕時計購入を許可してくれませんでした。「また無くすから」という理由は、私も反論できませんでした。高校3年間は腕時計なしで過ごすことになりました。

腕時計がない生活は思っていた以上に不便でした。授業中に時間を確認したい時は教室の時計を見上げる必要がありましたし、電車を待つ時も駅の時計を探さなければなりませんでした。友達との待ち合わせでは、相手に時間を聞くことが多くなりました。

特に困ったのは定期試験の時でした。試験中に時間配分を考えるために時計を見たいのですが、教室の時計は後ろや横にあることが多く、時間確認のために振り返ることで試験監督に怪しまれることもありました。

日常生活での不便さ: 時間確認が他者や環境に依存してしまう不自由さを痛感しました。

社会的な気まずさ: 友達に時間を聞くことの申し訳なさ。

学習への影響: 試験での時間管理の困難さ。

自立への渇望: 他人に依存しない時間管理への強い欲求。

大学入学と100均腕時計との出会い

大学に入学し、一人暮らしを始めることになりました。母からの監視の目が届かなくなった私は、自分で腕時計を購入することを決めました。しかし、アルバイトもまだ始めていない状況で、あまりお金をかけることはできません。

大学近くの商店街を歩いている時に見つけたのが、100円ショップでした。当時はまだ「100円ショップ」という業態自体がそれほど一般的ではなく、「本当に何でも100円なの?」という驚きがありました。

店内を見回していると、アクセサリーコーナーに腕時計が置かれているのを発見しました。デジタル式で、見た目は中学時代に使っていた3,000円の時計とそれほど変わりません。「本当に100円で腕時計が買えるの?」という半信半疑の気持ちで手に取りました。

独立への第一歩: 親の許可なく自分で購入できることの開放感。

価格への驚き: 100円で腕時計が買えることへの単純な驚き。

品質への疑問: 安すぎることに対する不安と期待が混在。

新しい発見: 100円ショップという業態との初めての本格的な接触。

初めての100均腕時計使用体験

100円の腕時計を購入して使い始めた時の感想は「普通に使える」というものでした。時刻表示は正確で、日付表示もあり、アラーム機能も付いていました。見た目も特別安っぽいということはなく、遠目には普通の腕時計と変わりません。

ただし、細かく見ると違いはありました。ベルトの質感がやや硬く、長時間付けていると手首が少し痒くなることがありました。また、ボタンの反応がやや鈍く、時々設定変更に手間取ることもありました。

それでも、100円という価格を考えれば十分すぎる機能でした。何より、「失くしても100円の損失」という気軽さが精神的に楽でした。これまでの「高価だから絶対に無くしてはいけない」というプレッシャーから解放された感覚は、新鮮でした。

コストパフォーマンス: 100円という価格に対する機能の十分さ。

心理的負担の軽減: 紛失への不安が大幅に減少。

品質の現実: 価格相応の制約はあるものの、実用性は十分。

新しい価値観: 「高いものを大切に使う」から「安いものを気楽に使う」への転換。

最初の紛失と発見した利点

予想通り、最初の100均腕時計は3ヶ月後に紛失しました。大学の図書館で勉強していた時に外し、そのまま置き忘れてしまったのです。翌日探しに行きましたが、既に見つかりませんでした。

しかし、今度は中学時代のような深刻な落ち込みはありませんでした。「まあ、100円だから」という気持ちで、同じ日に同じ100円ショップで同じ腕時計を購入しました。この時初めて、100均腕時計の真の価値を理解しました。

それは単に「安い」ということではなく、「失敗を恐れずに済む」「気軽に使える」「いつでも代替可能」という心理的自由でした。これまで腕時計に対して感じていた緊張感やプレッシャーが一気に消え去りました。

失敗への寛容性: 紛失しても深刻に悩まずに済む心理的余裕。

即座の代替可能性: すぐに同じものを購入できる利便性。

価値観の変化: モノとの向き合い方の根本的な変化。

精神的自由: 過度な緊張から解放された開放感。

大学時代の様々な実験

100均腕時計の気軽さに味をしめた私は、様々な実験を始めました。まず、複数の腕時計を同時に購入し、気分や服装に合わせて使い分けることにしました。黒いベルトのもの、シルバーのもの、白いベルトのものなど、5種類ほどを揃えました。

また、「もし壊れたらどうなるのか」を確認するため、あえて乱暴に扱ってみることもしました。水に濡らしたり、落としたり、ベルトを強く引っ張ったり。結果として、意外に丈夫で、普通の使用であれば半年から1年程度は問題なく使えることがわかりました。

友人たちからは「なんで安い時計ばかり使ってるの?」と聞かれることもありましたが、私の使用体験を話すと「なるほど、それは合理的だね」と理解してもらえました。中には「自分も試してみる」と言って100均腕時計を購入する友人も現れました。

多様性の追求: 複数所有することで、ファッションの一部として楽しめるようになりました。

耐久性の検証: 実際に使い込むことで、100円という価格の商品の実力を客観的に把握できました。

他者への影響: 自分の体験を共有することで、友人たちの価値観にも影響を与えました。

実験的思考: 「失っても大丈夫」という安心感が、様々な試行錯誤を可能にしました。

アルバイト先での実用性の実感

大学2年生からコンビニエンスストアでアルバイトを始めました。接客業では時間管理が重要で、腕時計は必需品でした。しかし、商品の陳列や清掃作業で手を激しく動かすことが多く、腕時計にとっては過酷な環境でした。

高価な腕時計を使っていたら、傷を付けないよう常に気を遣わなければならなかったでしょう。しかし100均腕時計なら、多少傷が付いても、汚れても、全く気になりません。むしろ「働いた証拠」として愛着すら感じました。

ある日、商品の搬入作業中に腕時計のベルトが切れてしまいました。普通なら修理を考えるところですが、私は翌日新しい100均腕時計を購入しました。同僚は「もったいない」と言いましたが、修理代を考えれば新品を買う方が経済的でした。

労働環境での実用性: 過酷な作業環境でも気兼ねなく使える安心感。

経済合理性: 修理より交換の方が安いという発見。

愛着の新しい形: 高価だから大切にするのではない、新しい愛着の感じ方。

実用性重視: 見た目より機能を重視する価値観の確立。

就職活動期の戦略的使用

大学4年生になり就職活動が始まると、身だしなみにより気を遣うようになりました。面接では第一印象が重要で、腕時計も身だしなみの一部として見られる可能性がありました。

「100均の腕時計で面接を受けるのは失礼なのでは?」という不安もありましたが、実際に面接官が腕時計のブランドや価格まで判断することはほぼ不可能だと考えました。重要なのは「時間を管理している」という印象を与えることであり、100均腕時計でもその役割は十分果たせました。

むしろ、就職活動中は移動が多く、腕時計を紛失するリスクが高い時期でした。実際、最終面接の日に駅のトイレで腕時計を外して忘れてしまい、面接会場近くの100円ショップで急遽新しいものを購入したことがありました。この時ほど100均腕時計の利便性を実感したことはありません。

社会的印象への配慮: ビジネス場面での身だしなみとしての機能。

リスクマネジメント: 紛失リスクが高い時期での保険的役割。

緊急時の対応力: いざという時の調達の容易さ。

本質の理解: 見た目より機能が重要であることの再認識。

社会人1年目:職場での発見

念願の会社に就職し、社会人生活が始まりました。職場を見渡すと、多くの先輩たちが高価そうな腕時計を着けているのが目につきました。ロレックス、オメガ、セイコーなど、私には手の届かないブランド時計ばかりでした。

最初は自分の100均腕時計が恥ずかしく感じました。「社会人なのに100円の時計なんて」という自己嫌悪もありました。しかし、実際に仕事をしてみると、腕時計の価格と仕事の能力は全く関係ないことがわかりました。

むしろ、100均腕時計を使っていることで思わぬメリットもありました。出張先で腕時計を忘れた時、現地の100円ショップで即座に調達できること。工場見学などの汚れる可能性がある場面でも気兼ねなく着けられること。同期の中には「賢い選択だね」と評価してくれる人もいました。

社会的プレッシャー: 職場での無言の圧力と自己評価の揺れ。

実用性の再認識: 価格と機能性は必ずしも比例しないことの実感。

差別化戦略: あえて違うことをすることの価値。

自信の確立: 他人の評価に左右されない自分なりの価値観の確立。

結婚と家族の理解

社会人3年目で結婚することになりました。婚約者(現在の妻)に初めて100均腕時計の話をした時、彼女は大笑いしました。「そんな発想はなかった」「でも確かに合理的よね」という反応でした。

結婚式の準備をしている時、「当日はちゃんとした腕時計を着けた方がいいんじゃない?」と妻に言われました。確かに一生に一度の晴れ舞台で100均腕時計というのも味気ない気がして、この時だけは2万円のセイコーの腕時計を購入しました。

しかし、結婚式が終わってからは再び100均腕時計に戻しました。妻も私の考え方を理解してくれ、「あなたらしい選択よね」と言ってくれました。結婚生活が始まってから、妻も100均商品の便利さを理解するようになり、時々一緒に100円ショップに買い物に行くようになりました。

パートナーとの価値観共有: 自分の考え方を理解してもらうことの大切さ。

特別な日の特別な選択: TPOに応じた柔軟な判断。

継続する信念: 一時的な変更はあっても、基本的な考え方は変わらない。

家族への影響: 自分の価値観が家族にも良い影響を与える。

子育て期の新たな発見

結婚から3年後、第一子が生まれました。育児が始まると、これまで以上に100均腕時計の価値を実感するようになりました。赤ちゃんの世話をしていると、手を頻繁に洗う必要があり、腕時計も頻繁に水に濡れます。

また、子供が成長してくると、腕時計を触ったり、引っ張ったりすることがよくありました。高価な時計だったら「触らないで!」と神経質になったでしょうが、100均腕時計なら「好きにさわっていいよ」と言えました。

息子が5歳になった時、「僕も時計が欲しい」と言い出しました。妻と相談した結果、まずは100均の子供用腕時計を買ってあげることにしました。案の定、3週間で壊してしまいましたが、子供も私たちも全く気にしませんでした。「また新しいの買おうね」で済みました。

育児環境での実用性: 子育て環境特有の過酷な使用条件への対応。

教育的配慮: 子供との関わりでの心理的余裕。

世代継承: 自分の価値観を子供に伝えること。

失敗への寛容性: 子供の失敗を温かく受け入れられる環境作り。

中年期の哲学的考察

40代に入った頃、ふと自分の100均腕時計使用歴を振り返ってみました。大学時代から数えて約20年、使用した100均腕時計は優に50個を超えていました。累計でも5,000円程度の出費です。

同世代の友人たちは、多くが10万円以上の高級腕時計を着けています。「ステータス」「投資」「一生もの」といった理由で高額な時計を購入していました。彼らの気持ちもわからなくはありませんが、私には100均腕時計で十分でした。

この20年間で学んだことは、「価値とは何か」ということでした。高価なものが必ずしも価値があるわけではない。自分にとって必要な機能を満たし、心理的負担が少なく、継続して使えるものこそ価値がある。100均腕時計は私にとって完璧な答えでした。

長期的視点: 20年間の使用経験から得られた知見。

経済的合理性: 累計コストでの圧倒的な優位性。

価値観の確立: 他人の価値観に惑わされない自分なりの哲学。

人生哲学: モノとの付き合い方から学んだ人生の教訓。

最新の100均腕時計事情

最近の100円ショップの腕時計は、私が最初に購入した20年前のものと比べて格段に進歩しています。デザインはより洗練され、機能も豊富になりました。防水性能も向上し、LED バックライトやストップウォッチ機能が付いたものまであります。

また、アナログ時計の種類も増え、ビジネス用からカジュアル用まで幅広いデザインが揃っています。価格は相変わらず110円(税込)ですが、品質は確実に向上しています。

息子も中学生になり、再び腕時計に興味を示すようになりました。今度は本物を欲しがっていますが、まずは100均腕時計で「時間を管理する習慣」を身に付けてもらおうと考えています。

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